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花束。




 サイクロップスとジーンの結婚式も終わり、Xマンションに帰る道すがら、ローグとジュビリーは、ビーストが持っている花束に興味津々だった。

「ねえ、ビースト。そのブーケどうするつもり?」

 ローグがこらえきれず口を開くと、すかさずジュビリーもその話題に加わる。

「もう、絶対欲しかったのに! 男には関係無いイベントだったのにさ」

 花嫁の投げたブーケを手にしたものが、次の花嫁になれる。ただのジンクスだが、女性にしてみれば真剣勝負なのだ。そこに水を注されたとジュビリーは膨れている。
 やっぱ、あの時飛んどくんだった、とローグが呟く中、ストームが二人をなだめようと口を開いた。

「ローグ、ジュビリー。ビーストのせいじゃないんだから」

 落ち着いたストームの口調に、二人は、まぁそうなんだけど…と煮えきらない返事をした。

「まぁ、私も残念だったけれど。問題はそこじゃないでしょう?結局私たち3人しかいないんだから」

「どういうこと?」

「?」

 ストームの冷静な見解に、ローグとジュビリーはどうやら気がついていないようだ。だが、だんだん話の方向が別の意味でやばくなってきたぞ…と、ビーストはこの話題を変えるべく、即興で詩を詠もうとした。

「X-MENという名前の店に、四つのりんごがあった。まだ一つは青いんだが。今日一つが売れていった。残ったのは…」

「青いりんごは、売れないから店から下げられてしまいました」

 ローグが面白がって口を挟んだ。この横槍にビーストはマズイ…と思いつつ、こうなったらもう続けるしかないと開き直った。

「……残ったりんごは2つ。ああ、この大いなる問題」

「さっぱりわかんないよ。私だけ仲間はずれにしてさ」

 半熟りんごに例えられたジュビリーは大げさに肩を竦めた。

「ええ、問題だわ」

 あくまで冷静に、しかし深刻にストームはローグの方を見た。見られたローグの方も、やっと言われていることの意味が判ったらしく、ストームの方に顔を向けた。二人の目が合った。その瞬間目に見えるほどの火花が散った。自分のミュータントパワーが暴発したかと、思わず手を見たジュビリーだったが、どうやら違うらしい。

「ねぇ、ビースト、何が問題なの?ストームとローグ、どうしちゃったの?」

 ビーストはやれやれ…とため息をついた。まさかこんな展開になろうとは…。ビーストはストームとローグの方を見ないようにしながらジュビリーの質問に質問で返した。

「X-MENという店にりんごはあと二つ。ここで、りんごがもう一つ売れてしまったらどうなるかな?」

「あ」

 ジュビリーは、気がついた。残ったりんごはあと一つ。つまり…。

「残った一人は…名実共に"X-MENの売れ残り"ってこと?」

「そういうこと」

 どうしてそういう痛いネタを…。とジュビリーはビーストを睨みながらストームとローグの気配を伺った。
 真に迫った女性とは、実に恐ろしく…。当分結婚の話は禁句だな…と呟くビーストを尻目に、ジュビリーは一刻も早くXマンションに着き、この壮絶な空間から脱出しようと歩調を速めるのだった。


 ジュビリー、ストーム、ローグ。ブーケを狙っていた時よりも別の意味で真剣になった、女3人、結婚式の帰り道だった―――。





END


アニメでのサイクとジーンの結婚式では、漫画とは違って、
ビーストが花束を受け取ってしまうのです。
因みに漫画では、ローグが飛んでゲットしています。ええ、ズルですね(笑
そして、アニメのX-MENチームは人数が少ないので、
もう残っているのは…っていう話に。
 三人称って難しい…。
(2003.11.11脱稿)

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