告白。
あなたをただ…ただ、愛することだけできたなら。どんなに幸せなことでしょう。
やさしく包んで全てから守り、穏やかな微笑みがその頬から消えることのないようにできたなら――――。
どこで間違ってしまったのか。いつから間違ったままなのか。
やつが俺の下でもがく。
爪でその身を引き裂き、牙を肩口に埋め、俺は抵抗するこいつを押さえつける。
やつが俺を見る。
その目。
俺の想いを打ち砕く視線。苦悶の表情に宿る強い光。
もはや物言えぬやつの視線。俺の下で息粗くその身を震わせながら、なお醒め遣らぬ輝きが語る。
おまえを、憎んでいると――――
だが同時に、その目が何故こうも、俺を昂ぶらせるのかを、知っている。
その強い気持ちを知っている。
闇の中で生まれ、育ったときから。
おまえたちを、憎んでいると――――
熱い視線が、俺を焼く。心を焼き払い、身の内の獣に火をつける。俺の望みなど、想いなど、端から存在しなかったかのように。なれ親しんだ獣が、―――俺が嗤う。
ああ――。あの感情が、あの強い想いが、今やつの身を焼いているのかと思うと…。それだけでどこまでもイけそうだ。
そして俺は、容赦なくこいつを責めたてる。
やつの目からあの光が消えるまで―――。
意思を失った体を抱きしめ、血と汗に濡れる額に張り付いた髪をそっと撫で付けると、少し前の興奮は覚め、獣が去っていく。そして、ぽっかり開いた俺の胸に触れるのはこいつの温もりだ。
こうして髪を撫でるといつも、こいつは眉根を少し緩めて―――。
それに気がついたのはいつだったか。
「…ちび。…ローガン……」
俺の本当の望みが叶うことは無いのだということは、分かっている。
俺がやつらを愛することが無かったように、こいつも俺を愛することは無いのだと。
何よりも、あの目が――――。
あなたをやさしく抱き締める。眠ったままの獣と共に。
叶わない永遠の望みと共に。
あなたを愛し、そして何より愛されることができたなら―――。
fin.
>>>>side WOLVERINE